京都府立医科大学

講習会プログラム

  

講演会はストリーミング動画のWeb配信形式で開催します

 

講演会第1日目  2020年8月20日(木) 9:45~

① 組織と細胞の基本    

  講師:山田俊児  京都府立医科大学生体構造科学

【内容】我々「ヒト」の身体は膨大な数の“細胞”により構成される。細胞が増殖と分化を繰り返す中で,特定の形態・機能を有す細胞同志は集合し,構造および機能面で合目的性をもつ“組織”を形成する。組織は大きく4つ(上皮組織、支持組織、筋組織、神経組織)に分類され、その組織が組み合わさって器官(臓器)となる.組織細胞化学は組織や細胞の構造と機能を研究する方法の一つであり,組織・細胞を可視化する方法や可視化した組織・細胞を観察するための機器(顕微鏡)の進化により発展してきた。本講演では,組織細胞化学を学ぶ上で必要となる組織と細胞の基本的知識について,器官における組織の分布と,各々の組織の特徴について概説する。

② 組織の固定について

         - 分子、形態、機能を捉える組織細胞化学の大切な入口 -    

  講師:宮崎龍彦 岐阜大学医学部附属病院病理部

【内容】組織・細胞の観察に適切な組織の処理と固定が必須である。固定の理想は生体活動がそのまま不溶化,不動化されることであり,組織,細胞の構造を正確に観察するために分子の迅速,厳密な不動化を行うことと,その機能を捉えるために,それらの生物活性をできるだけ元のまま保存することという矛盾する2つの要件をバランスよく満たすことが重要である。本講演ではまず,組織の取り扱いの基礎を概説したのち、化学固定と物理固定という固定の原理と固定剤の種類,固定の条件および標準的なプロトコール,固定をよくするための工夫について詳細に述べ,その後,実験動物の固定に理想的と目される灌流固定の実際について実例とともに解説する。

③ 光学顕微鏡の原理と観察法

  講師:原田義規 京都府立医科大学細胞分子機能病理学

【内容】光学顕微鏡は生命科学において不可欠な観察ツールである。その基本型である明視野顕微鏡は、見たいものが簡単に見られるため、その原理を殆ど意識することなく使われている。また、近年の蛍光イメージング技術の進歩とともに光学顕微鏡は高機能化・複雑化し、観察者には手を加えられない「ブラックボックス化した」ものが普及してきた。しかし、何れの顕微鏡も機械任せに使っていては、その機能が十分に発揮されず誤った結果や解釈にもつながりかねない。光学顕微鏡を使いこなすには、その基本的な仕組みや使い方を理解しておくことが大切である。本講習では光学顕微鏡に関する基礎的事項を解説し、明視野顕微鏡、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡について、各々の原理と使い方のポイントを解説する。

④ 免疫組織化学法の原理と基礎    

  講師:小澤一史 日本医科大学 大学院医学研究科 解剖学・神経生物学分野

【内容】免疫組織化学法は、抗原抗体反応という生体が有する多様で特異的な分子認識機構を利用して、細胞、組織、臓器、そして個体の中に存在する特定の物質を探索し、可視化する極めて有用で、実際に幅広く用いられている研究手法である。この免疫組織化学法が成立する「鍵」と「鍵穴」の関係的な抗原抗体反応の原理、および実際の反応における重要なポイント、特に「抗体」、「固定」、「可視化」を中心に、実際のノウハウも加えて出来るだけ分かり易く、実践的な基本について講演し、その上で、初心者としての、また現場で経験している上での疑問点や助言等を遠慮なく意見交換する時間にしたい。

⑤ 酵素抗体法の基礎と実際    

  講師:中村明宏 京都府立医科大学細胞分子機能病理学

【内容】酵素抗体法は、蛍光抗体法と並び、特異抗体を用いて着目する分子の組織あるいは細胞内分布を知るための最も基本的かつ重要な実験手法の一つとして、基礎研究あるいは臨床検査の現場で現在広く行われている。しかしその基本的な反応の仕組みはしばしば十分に理解されないまま実施されており、注意すべきピットホールもまた少なくない。本講習では主としてこれから新たに本方法を始めようとする人たちを対象として、酵素抗体法の基本的な原理および実際の実験方法について解説するとともに、誤りやすい点や日常しばしば遭遇するトラブルとその対策について、できる限り実例を交えながらわかりやすく解説したい。

⑥ 蛍光抗体法の基礎と応用    

  講師:松﨑利行 群馬大学大学院医学系研究科 生体構造学分野

【内容】蛍光抗体法は今日のライフサイエンス分野において、最も広く用いられている手法の一つである。本講演では動物組織の凍結切片やパラフィン切片、さらに培養細胞からの蛍光抗体法、とくに間接法について、以下の点を中心に解説する予定である。①蛍光抗体法の基礎的な知識、②蛍光抗体間接法の実際の手順と工夫点・注意点、③蛍光多重染色の実際の手順と工夫点・注意点、④バックグランド蛍光への対処、⑤標本の保管。初心者の皆様にはもちろんであるが、見様見真似で始めてみたもののうまくいかない、原理がわからない、何か工夫できないか、といった悩みをお持ちの経験者の皆様にも参考になるよう、演者の経験を踏まえて解説する。

⑦ イムノブロッティング法の基礎と応用    

  講師:竹腰 進  東海大学医学部基礎医学系生体防御学

【内容】イムノブロッティング法は、医学・生物学分野の研究に広く用いられている基本的な実験法の一つである。本法の大きな特徴は抗体によって検出された蛋白質の分子量を確認することが出来る点であり、標的とする蛋白分子に対する特異抗体を入手することができれば、正確な発現解析が可能となる。最近では、抗リン酸化蛋白抗体、抗アセチル化蛋白抗体など化学修飾された蛋白質に対する抗体が市販されるようになり、単なる発現解析ばかりでなく、細胞内情報伝達系や転写制御に関する情報を本法により得ることが出来るようになった。本講習会では、イムノブロッティング法の原理、基本的な手技、実際に本法を行う際に注意すべき点などを中心に解説する。

⑧ in situ hybridization法の原理と応用    

  講師:菱川善隆  宮崎大学医学部解剖学講座組織細胞化学分野

【内容】in situ hybridization (ISH)法は細胞・組織切片上で特定の遺伝子を同定する方法である。この方法は、細胞個々のレベルで遺伝子を視覚化できるだけでなく、タンパク質に翻訳されないnon-coding RNAの検出や、免疫組織化学で判別しにくい相動性の高いタンパク質のmRNA発現の判別、更に、分泌タンパク質の実際の産生細胞の同定、等に関して、PCR等の他の遺伝子検出法に比べて有用な解析法である。しかし、実際の操作と結果の評価については、ある程度の「熟練」と「的確な対照実験」が必須である。本講習会では実験器具の準備や試料の固定・薄切等の注意点を含めて、初心者にも扱いやすいオリゴDNAプローブを用いたISH法の基本的手技とその応用について具体的に詳細に解説する。

⑨ ホールマウントin situ hybridization の実際    

  講師:八代健太  京都府立医科大学生体機能形態科学 

【内容】解析対象の遺伝子が、組織内にどのような空間的な分布を持って発現しているのかを視覚化する方法が、whole mount in situ hybridizationである。これは、Northern blotのようなhybridizationによる分子生物学的な検出原理に組織学的方法を組み合わせることによって、組織切片ではなく組織を丸ごと用いることで、3次元的位置情報を有する極めて有益な遺伝子発現情報を提供する。開発から27年ほど経つ現在においても、是非とも習得しておきたい極めて重要な研究手法の一つである。本講習では、この手法の原理と、成功させるためのポイントを解説する。

 

講演会第2日目  2020年8月20日(木) 9:30~

⑩ 生きた状態を反映させた解析をめざす生体内凍結技法    

  講師:寺田信生  信州大学大学院医学系専攻保健学分野  

   講師:大野伸一  山梨大学医学部名誉教授

【内容】生き物の細胞組織における生理的機能は、多くの水分を含んだ微小環境下で行われています。そのために、生きた生体内臓器での生理的機能を解析するためには、その微小環境を反映させた標本を作製する必要があります。本講演では、切除試料を速やかに急速凍結し凍結置換固定法や凍結割断法などを経て光顕や電顕によって可視化する、凍結を用いた試料作製法の基礎的事項を概説し、さらに生体内凍結技法について解説したいと思います。

⑪ 免疫電子顕微鏡法の基礎と応用    

  講師:秋元 義弘  杏林大学医学部顕微解剖学教室

【内容】電子顕微鏡を用いて組織や細胞の微細構造内における分子の局在を捉える免疫組織細胞化学を免疫電子顕微鏡法(免疫電顕)と呼ぶ。免疫電顕には、樹脂包埋する前に免疫反応を行う包埋前標識法と、樹脂包埋後に超薄切片上で免疫反応を行う包埋後標識法がある。さらに樹脂包埋しないで凍結超薄切片を作製し、免疫反応を行う手技を凍結超薄切片法と呼んでいる。それぞれの手法で、反応の感度、微細構造の保存や反応の定量性において長所、短所がある。本講義ではこれらの免疫電子顕微鏡法について基本的な手技と実際に行う際の注意点について解説し、どの方法でどのように見えるか、何の観察に適しているかの応用例について示す。

⑫ ボリューム電子顕微鏡イメージングにおける組織細胞化学    

  講師:大野伸彦  自治医科大学医学部 解剖学講座組織部門組織学

【内容】電子顕微鏡は生理機能や病態生理を理解するための微細構造情報を取得するために、現在も頻繁に用いられています。その中で、組織細胞化学的手法は特定の分子や構造を同定する上で、重要な役割を果たしてきました。近年、急速に普及しつつあるボリューム電子顕微鏡イメージングによる3次元微細構造解析においても、こうした手法は研究を進める上で強力なツールになりつつあります。本講演では、ボリューム電子顕微鏡イメージングの特徴について概説するとともに、組織細胞化学的手法の応用の利点や注意点、そして実際の手技について、研究に応用する上での一助になることを目標に、わかりやすく解説します。

⑬“遺伝子改変動物を用いた神経細胞の可視化と応用”    

  講師:田中雅樹  京都府立医科大学生体構造科学

【内容】神経組織における細胞局在は目的とするニューロンやグリアのマーカーに特異的な抗体を使用すれば免疫組織化学法により鏡視下に観察することができる。しかしながらニューロンの場合、介在ニューロンでは細胞体付近の局所に軸索が存在するが、投射ニューロンでは軸索を他の領域まで送る。従って免疫組織化学法で神経線維や神経終末を観察しただけでは、それが同じ領域の細胞体由来のものか、他領域からの投射線維なのか判別できない。神経回路の同定は神経科学の重要な課題の一つである。今回Cre-loxPシステムを応用して、遺伝子改変マウスとアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いたニューロンの可視化方法を、自験例を紹介しながら解説する。

⑭ 組織透明化技術の基本から応用まで    

  講師:日置寛之  順天堂大学医学部神経生物学・形態学講座 

【内容】光の散乱および吸収により、物質の不透明性が生じる。組織透明化技術は、生体組織に起因する光散乱の低減化を図ることで、生体試料の深部まで観察することを可能にする。透明化処理自体は誰もが実行できる簡単な操作だが、光学顕微鏡観察時には屈折率に特段の注意を払う必要がある。透明化液に適した対物レンズを選択することが、イメージング成功の可否を握る。本講習ではScaleS法を例に、透明化処理の基本から光学顕微鏡によるイメージング法までを解説する。また、ScaleS法は電子顕微鏡観察にも対応するという特徴を持っており、マクロレベルからナノレベルへのズームイン法についても紹介する。

⑮ イメージング質量分析法を用いたプロテオームレベルの

       細胞組織病理解析法について  

  講師:池川雅哉 同志社大学生命医科学部 医生命システム学科神経生理学

【内容】イメージング質量分析(Imaging Mass Spectrometry;IMS)法は、組織切片上に存在する物質を直接マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)型質量分析計で検出し、それぞれの物質の切片上での位置情報と従来の組織・病理学情報との比較を行う方法である。これまでIMS法の対象分子としてタンパク質・ペプチドは難易度の高い分野であったが、超高速質量分析器の開発とインフォマティクスの進展により, 抗体だけでは特定できなかったペプチド断片の修飾・局在情報を一挙に取得できるようになった。バイオプシーサンプルなどのホルマリン固定パラフィン包埋試料を対象としたタンパク質・ペプチドの同定と局在についての統合的な解析方法の基本手技について紹介する。

⑯ エピジェネティクス解析と組織細胞学への応用    

  講師:松田賢一  京都府立医科大学生体構造科学

【内容】エピジェネティックスとは、DNA塩基配列の違いによらない遺伝子発現の多様性を生み出す仕組みの総称であり、主にクロマチンの修飾を介した制御機構である。ヒトをはじめとしたゲノム配列の解読完了と生化学・分子生物学的手法による解析系の確立により、エピジェネティック機構の研究が医学・生命科学の広範な分野で行われ、多種多様な生命現象や病態の解明に貢献している。本講演では、エピジェネティック機構の概説をしたうえで、DNAメチル化解析やクロマチン免疫沈降によるヒストン化学修飾解析などのエピジェネティック研究の基本手法を示す。さらに、組織細胞学研究への応用ついて、免疫組織化学染色から、生細胞蛍光イメージングまで、例を取り上げて紹介する。

⑰ レーザーマイクロダイセクション法の基礎    

  講師:中西陽子  日本大学医学部病態病理学系腫瘍病理学分野

【内容】レーザーマイクロダイセクション法は、顕微鏡の対物レンズを通して発振されるレーザーで、研究対象としたい組織や細胞を直接同定して切り取り、回収する方法である。新鮮凍結組織やホルマリン固定パラフィン包埋組織などを薄切して染色した標本の他、培養細胞や細胞診検体でも使用できる。生体組織には様々な細胞が混在しているが、本法の開発により、組織や細胞の形態学的所見と各種分子の発現を関連付けて解析することが可能となった。本報ではレーザーマイクロダイセクション法とそれに関連する基本的手技やピットフォールについて解説する。

⑱ 病理組織検体を用いた検査と病理診断 

     ―診断確定から治療薬選択―    

  講師:宮川(林野)文  京都府立医科大学人体病理学講座・病理診断科

【内容】腫瘍診断の基準となるWHO分類では、形態診断に加え、分子遺伝学的情報を併記する統合的診断名を採用する方向で進んでいる. 従来の形態診断に対して、分子診断が客観性、臨床的意義の観点で優れ、免疫組織化学法(IHC)による古典的な腫瘍の分化方向の確認だけでなく、FISH等を用いた遺伝学的検索が診断に必須となった. さらに、分子標的薬適応のためのIHCを用いた当該分子の発現の評価や病理組織検体から抽出した核酸を用いた遺伝子変異の検索が日常的になされている. 最近では、NGS技術による遺伝子パネル検査を用い、変異に応じた分子標的薬を選択する個別化医療が現実化しつつある。病理組織検体の取り扱いや病理診断への各手法の応用について言及する。

 

*5月18日現在の情報です。

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