京都府立医科大学
京都府立京都学・歴彩館

講習会プログラム

8月4日(1日目)  京都府立京都学・歴彩館

9:00 開場
開会挨拶 9:30~ 開会挨拶 小澤一史 理事長
田中雅樹 実行委員長
座長 西 真弓(奈良県立医科大学)
講演1 9:45~10:25 生体分子と細胞・組織
江原鮎香(獨協医科大学)
講演2 10:25~11:05 組織・細胞の固定について「生命現象をミクロのレベルで可視化して捉える大切な入口」
宮崎龍彦(岐阜大学)
講演3 11:05~11:45 光学顕微鏡の基礎と正しい使い方
田中秀央(京都府立医科大学)
11:45~13:00 昼休み
座長 中山 淳(信州大学)
講演4 13:00~13:40 免疫組織化学の原理、基本、応用展開
小澤一史(日本医科大学)
講演5 13:40~14:20 蛍光抗体法の基礎と実践
松﨑利行(群馬大学)
講演6 14:20~15:00 培養系を用いた組織細胞化学解析の基礎と応用
田口勝敏(京都府立医科大学)
15:00~15:20 休憩(20分)
座長 北澤 荘平(愛媛大学)
講演7 15:20~16:00 抗原性賦活化法の基礎と実際
増田しのぶ(日本大学)
講演8 16:00~16:40 In situ hybridization法
菱川善隆(宮崎大学)
講演9 16:40~17:20 Immunoblotting法の基礎と応用
竹腰 進(東海大学)

8月5日(2日目)  京都府立京都学・歴彩館

9:00 開場
座長 松野 彰(国際医療福祉大学)
講演10 9:30~ 10:10 電子顕微鏡の基礎と応用
秋元義弘(杏林大学)
講演11 10:10~10:50 免疫電子顕微鏡の実践
坂本 浩隆(岡山大学)
講演12 10:50~11:30 組織細胞化学を応用したボリューム電子顕微鏡イメージング
大野伸彦(自治医科大学)
11:45~12:40 昼休み
座長 小野 勝彦(京都府立医科大学)
講演13 12:40~13:20 蛍光分子イメージングにおけるFRAPと FRET の実際
谷田任司(大阪公立大学 令和4年3月まで大阪府立大学)
講演14 13:20~14:00 In utero electroporation法と組織化学解析
野村 真(京都府立医科大学)
14:00~14:10 休憩(10分)
座長 遠山 育夫(滋賀医科大学)
講演15 14:10~14:50 ウイルスベクターを用いた神経回路トレーシング法
山田 俊児(京都府立医科大学)
講演16 14:50~15:30 イメージング質量分析法を用いたアルツハイマー病脳病理の解析
池川雅哉(同志社大学)
15:30~15:40 休憩(10分)
座長 村田 晋一(和歌山県立医科大学)
講演17 15:40~16:20 レーザーマイクロダイセクション法の基礎と病理組織での実践
中西陽子(日本大学)
講演18 16:20~17:00 AIを用いた病理組織デジタル画像解析
吉澤明彦(京都大学)
閉会の挨拶 17:00 第48回実行委員長 大野伸彦(自治医科大学)

講演1

生体分子と細胞・組織
江原鮎香(獨協医科大学)

我々ヒトを含めた生体は、最小の生命単位である『細胞』の巨大な共同体である。『細胞』は、機能的・構造的に合目的性をもつ集合体として『組織』を形成し、各組織の組み合わせにより『器官(臓器)』が構成される。生体の構造や機能には、様々な生体分子が関わっている。組織細胞化学法は、これらの生体分子をマーカーとして用いて、細胞・組織の構造や機能を解析する技法である。可能な限り生体に近い条件下で、マーカー分子の局在や動態を可視化することが求められる。本講演では、組織細胞化学法を用いる上で基礎となる、生体分子や細胞・組織の基本構造や機能について概説する。

 

講演2

組織・細胞の固定について「生命現象をミクロのレベルで可視化して捉える大切な入口」
宮崎龍彦(岐阜大学)

組織・細胞の観察に適切な組織の処理と固定が必要不可欠である。固定の理想は生体活動がそのまま不溶化,不動化されることであり,組織,細胞の構造を正確に観察するために分子の迅速,厳密な不動化を行うことと,その機能を捉えるために,それらの生理活性をできるだけ元のまま保存するという矛盾する2つの要件をバランスよく満たすことが重要である.本講演ではまず,組織の取り扱いの基礎を概説したのち、化学固定と物理固定という固定の原理と固定剤の種類,固定の条件および標準的なプロトコール,固定をよくするための工夫について詳細に述べ,その後,実験動物の固定に理想的と目される灌流固定の実際について実例とともに解説する.

 

講演3

光学顕微鏡の基礎と正しい使い方
田中秀央(京都府立医科大学)

光学顕微鏡は組織・細胞の形態観察に不可欠なツールである。その基本型である明視野顕微鏡は、その簡便さゆえ原理を意識することなく使われている。一方、光学顕微鏡は分子の分布や動態を詳細に観察できるまでに進化し、観察者には手の加えられない複雑な機器ともなっている。何れの顕微鏡も機械任せに使っているとその機能を十分に発揮できず誤った結果・解釈をもたらしかねない。顕微鏡を使いこなすには、その基本的な仕組みや使い方を理解しておくことが大切である。ここでは光学顕微鏡に関する基礎的事項を解説し、組織細胞化学で広く用いられる明視野顕微鏡、位相差顕微鏡、蛍光・共焦点顕微鏡につき、各々の原理と正しい使い方につき解説する。

 

講演4

免疫組織化学の原理、基本、応用展開
小澤一史(日本医科大学)

免疫組織化学法は、抗原抗体反応という生体が有する多様で特異的な免疫学的分子認識機序を応用して、細胞、組織、臓器、そして個体の中に存在する特定物質を探索し、顕微鏡下で可視化する極めて有用で、実際に幅広く用いられている研究手法である。この免疫組織化学法が成立する「鍵」と「鍵穴」の関係に例えられる抗原抗体反応の原理、および実際の反応における重要なポイント、特に「抗体」、「固定」、「可視化」を中心に、実際のノウハウも加えて出来るだけ分かり易く、実践的な基本について講演し、その上で、免疫組織化学法の拡がり、応用的手法について紹介する。

 

講演5

蛍光抗体法の基礎と実践
松﨑利行(群馬大学)

蛍光抗体法は,今日のライフサイエンス分野では標準的な手法の一つである.簡単な手法ではあるが,ちょっとした工夫でクオリティーの高い結果が得られたり,逆に良好な結果が得られなかったりするのも事実である.本講演では動物組織の凍結切片やパラフィン切片,さらに培養細胞からの蛍光抗体法について,基礎的な知識,および実際の手順と工夫点・注意点について解説する.初心者の皆様にはもちろんだが,見様見真似で始めてみたもののうまくいかない,原理がわからない,もう少し良い結果が得られないか,といった悩みをお持ちの経験者の皆様にも参考になるよう,演者の経験を踏まえて解説する.

 

講演6

培養系を用いた組織細胞化学解析の基礎と応用
田口勝敏(京都府立医科大学)

生体内の多様で複雑な生命現象を解析する過程において、組織を構築する様々な細胞の培養技術とその可視化技術は古今を問わず、必要不可欠なものである。近年、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)や超高解像度顕微鏡などのイメージング機器の改良と普及によって、よりはやく、より簡便に、生体組織の微細な構造のみならず、細胞内外における精細な分子動態の観察も可能となってきた。本講習では、MDCKやDLD1といった培養上皮細胞とマウス胎児脳由来初代培養神経細胞を例に挙げ、これらの基本的な培養方法とその注意点について概説すると共に、蛍光顕微鏡によるライブイメージング技術、及びCLSMを用いた観察方法について紹介する。

 

講演7

抗原性賦活化法の基礎と実際
増田しのぶ(日本大学)

免疫組織化学における抗原性賦活化法の開発は、一つの重要な契機であった。抗原性賦活化により、微量蛋白の可視化が可能となり、固定条件による染色性の不安定性が軽減され、染色結果の評価に再現性がもたらさせるようになった。その結果、研究分野においては免疫染色の応用可能性が広がり、さらに、実診療の現場においても応用可能な技術的進歩を遂げた。本講演においては、抗原性賦活化の理論と実践について解説する。抗原性賦活化法の留意点と今後の発展性についても触れ、より実践的な内容となるよう解説する。

 

講演8

In situ hybridization法
菱川善隆(宮崎大学)

In situ hybridization (ISH)法は細胞・組織切片上で特定の遺伝子を同定する方法です。この方法は、細胞レベルで遺伝子を視覚化できるだけでなく、タンパク質に翻訳されないnon-coding RNA検出や、免疫組織化学で判別しにくい相動性の高いタンパク質のmRNA発現の判別、更に、分泌タンパク質の実際の産生細胞の同定、等に関して、PCR等の他の遺伝子検出法に比べて有用な解析法です。しかし、実際の操作と結果の評価については、ある程度の「熟練」と「的確な対照実験」が必須です。本講習会では実験器具の準備、試料の固定・薄切等の注意点を含め、初心者にも扱いやすいオリゴDNAプローブを用いたISH法の基本的手技と応用例について具体的に解説します。

 

講演9

Immunoblotting法の基礎と応用
竹腰 進(東海大学)

Immunoblotting法は、医学・生物学分野の研究に幅広く用いられている実験法の一つである。本法の大きな特徴は抗体によって検出された標的蛋白質の分子量を確認することが出来る点である。特異抗体を入手することにより標的分子の正確な分子量を確認した上で発現解析が可能となる。最近では、抗リン酸化蛋白抗体、抗アセチル化蛋白抗体など修飾蛋白質に対する抗体が市販されるようになり、単なる発現解析ばかりでなく、細胞内情報伝達系や転写制御に関する情報を得ることが出来るようになった。本講習会では、Immunoblotting法の原理、基本的な手技、注意すべき点などを中心に解説する。

 

講演10

電子顕微鏡の基礎と応用
秋元義弘(杏林大学)

一般的に光学顕微鏡による構造の分解能は約0.2~0.4 µm程度である.さらに微細なレベルでの構造を観察するためには,電子顕微鏡(電顕)が用いられている.通常用いられる電顕には,透過電顕と走査電顕がある.透過電顕は超薄切片を作って組織・細胞の内部構造を観察する.これに対し,走査電顕は,超薄切片を作らずに固定した組織や細胞を乾燥させて,その表面を三次元的に観察する.本講演では,電顕観察する際の試料作製の基本的な方法,電顕を研究にどう応用するか,さらに電顕像を正しく読み解くポイントについて概説する.

 

講演11

免疫電子顕微鏡の実践
坂本 浩隆(岡山大学)

電子顕微鏡を用いて行う免疫組織化学を免疫電子顕微鏡(免疫電顕)と呼ぶ.免疫電顕では,光学顕微鏡レベルでは不可能なナノレベルでのタンパク質の細胞内局在を解析することができる.免疫電顕と聞くと初心者にはハードルが高いように思われがちではあるが,手技自体はそれほど難しくはない.免疫電顕には免疫反応を樹脂包埋する前に行うか,後に行うかによって包埋前染色法(pre-embedding method)と包埋後染色法(post-embedding method)とに分類される.本講演では,これら二者の特性と具体的な使用例を紹介し,免疫電顕を効率よく実践するために,どのようにアプローチすべきかを概説する.

 

講演12

組織細胞化学を応用したボリューム電子顕微鏡イメージング
大野伸彦(自治医科大学)

組織細胞化学は電子顕微鏡による微細形態観察において、生命現象を担う特定の分子や構造を可視化し同定する上で、重要な役割を果たしてきました。最近、多くの研究で用いられるようになってきた、連続電子顕微鏡画像からの3次元再構築を行うボリューム電子顕微鏡イメージングにおいても、組織細胞化学的手法は有用なツールになってきています。本講演では、ボリューム電子顕微鏡イメージングの基礎についての概説からはじめ、組織細胞化学的手法を応用することの利点や注意点、そして実際の手技などについて、研究を進める上での一助になることを目標に、わかりやすく説明します。

 

講演13

蛍光分子イメージングにおけるFRAPと FRET の実際
谷田任司(大阪公立大学 令和4年3月まで大阪府立大学)

FRAPやFRETを行うことで,蛍光分子イメージングによる細胞内分子の分布や局在のデータから更に踏み込み,解析対象分子の可動性やタンパク質間相互作用といった動態情報を可視化し,新たな発見に繋げることが出来る。FRAPでは,レーザーによる褪色からの蛍光回復速度を定量し,分子の可動性を解析する。FRETは,近接した蛍光分子間でエネルギーが移動する性質をタンパク質間相互作用解析に応用する手法である。いずれも,GFPやその変異体等により目的タンパクを標識し,共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析する方法が広く普及している。本講演では,初学者向けにFRAPやFRETを行うための基本的知識と実験例を解説したい。

 

講演14

In utero electroporation法と組織化学解析
野村 真(京都府立医科大学)

ヒトを含む哺乳類の大脳皮質は進化の過程で著しく肥大化し、高度な知性の獲得に寄与してきた。大脳皮質の拡大は胎児期における神経前駆細胞の爆発的な増殖、さらに分化した神経細胞の放射状移動に大きく依存している。近年、こうした大脳皮質のダイナミックな発生過程を制御する分子機構の解明が進んでいるが、この背景には胎児脳に簡便かつ高効率で外来遺伝子を導入できる革新的な技術開発があった。本講演では、子宮内電気穿孔法による大脳皮質への遺伝子導入技術、また遺伝子改変個体の解析に欠かせない組織化学的手法について、技術の概要と手順、トラブルシューティング等、初学者向けにわかりやすく紹介する予定である。

 

講演15

ウイルスベクターを用いた神経回路トレーシング法
山田 俊児(京都府立医科大学)

神経細胞(ニューロン)は軸索を介して別のニューロンの細胞体や樹状突起,さらには筋線維や感覚細胞等にシナプス接続し「神経回路」を構築する.脳や脊髄といった中枢神経系だけでなく末梢神経系を介した様々な器官の制御には神経回路が大きく貢献することから,神経回路の同定は神経科学分野において重要な課題の一つである.近年,ウイルスベクターによるニューロンへの外来遺伝子の導入により,ニューロンを強く標識し,その軸索輸送能力を利用した詳細な神経回路研究が行われている.本講演では,様々なウイルスベクターを用いた神経回路トレーシング法について,我々の実験例を紹介しながら概説する.

 

講演16

イメージング質量分析法を用いたアルツハイマー病脳病理の解析
池川雅哉(同志社大学)

アルツハイマー病脳やアミロイド血管症脳における血管や脳実質へのアミロイドβ(Aβ)の蓄積は病態形成の中心的事象であるが、その分子基盤については未解明の部分が多い。イメージング質量分析法(Imaging Mass Spectrometry:IMS)は, 組織切片にレーザーを照射し直接イオン化を行い走査・検出する技術である。本稿では、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)型IMS法を用いたヒト脳のAβプロテオフォーム・マッピング法について述べ、とくにAβのC端、N端の切断・修飾を含むAβプロテオフォームの分布を抗体を用いず網羅的に解析が可能となった例について紹介する。さらに低分子代謝物を対象としたIMS との関連についても若干の考察を加えた。

 

講演17

レーザーマイクロダイセクション法の基礎と病理組織での実践
中西陽子(日本大学)

レーザーマイクロダイセクション法は、ディスプレイ上で顕微鏡画像を確認しながら研究対象としたい組織や細胞を直接同定してレーザーで切り取り、回収する方法です。網羅的な解析技術が著しく発展した現在、解析したい組織や細胞を明確にすることの重要性は一層高まっていると思われます。解析試料として、特に患者より採取された病変組織から作製される病理標本を用いる場合、様々な細胞が混在していることが多いため、標的細胞を同定して回収することが求められます。本報ではレーザーマイクロダイセクション法とそれに関連する基本的手技やピットフォールについて解説します。

 

講演18

AIを用いた病理組織デジタル画像解析
吉澤明彦(京都大学)

組織細胞化学は,特定の分子の局在や発現状態について、形態学を基盤に解析する研究手法である。従来,顕微鏡によって可視化された組織・細胞は様々な手法で数値化され,その意味合いを統計学的に処理することで,仮説の証明に用いてきた。昨今では対象となる顕微鏡像をデジタル化しコンピュータを用い解析することが多い。近年は人工知能を用いた解析法が出現してきている。人工知能,特に深層学習にはその技術を開発する側面と,既にある技術を利用する側面があり,多くの生物学者は後者の立場となると考えられる。本講演では,組織細胞化学を学ぶ者にとって必要となる画像解析の基礎知識とその応用について人工知能の技術をあわせ概説する。

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