一橋講堂
日本大学医学部

講習会プログラム

 

2019年8月1日(木) 講習会第1日目(一橋講堂)

 

9:30 小路武彦理事長挨拶
9:40 増田しのぶ実行委員長挨拶
①形態観察の基礎
9:45 – 10:25 生体内細胞・組織の基礎

上田 秀一 

(獨協医科大学医学部解剖学(組織)講座)

10:25 – 11:05 組織の取り扱いと固定方法の基礎 -形態学の大切な入口-

宮崎 龍彦 

(岐阜大学医学部附属病院病理部・病理診断科)

11:05 – 11:45 組織化学の原理と観察の基礎

田中 秀央 

(京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学)

12:00 – 12:45 ランチョンセミナー
②分子を観る-蛋白質-
13:00 – 13:40 ボリューム電子顕微鏡イメージングにおける組織細胞化学

大野 伸彦 

(自治医科大学医学部解剖学講座組織学部門)

13:40 – 14:20 免疫組織化学染色の実際と注意点

小澤 一史  

(日本医科大学大学院医学研究科解剖学・神経生物学分野)

14:20 – 15:00 免疫染色の応用―多重染色法―

池田 勝秀 

(国際医療福祉大学成田保健医療学部医学検査学科)

15:00 – 15:20 休憩
③分子を観る-DNA、RNA-
15:20 – 16:00  FISH法の原理と応用:コンパニオン診断からゲノム機能解析まで

稲澤 譲治 

(東京医科歯科大学難治疾患研究所)

16:00 – 16:40 In situ hybridization (RNA)の基礎と応用

菱川 善隆  

(宮崎大学医学部解剖学講座組織細胞化学分野)

16:40 – 17:20 エピジェネティクスと組織化学

北澤 荘平 

(愛媛大学大学院医学系研究科分子病理学講座)

17:40 – Meet the experts with wine and foods

一橋講堂 食堂にて

(質問コーナー & 懇親会)

 

2019年8月2日(金) 講習会第2日目(一橋講堂)

 

④分子を観る-脂質、膜、糖鎖-
9:30 – 10:10 細胞の膜脂質

向井 康治朗  

(東北大学大学院生命科学研究科細胞小器官疾患学分野)

10:10 – 10:50 糖鎖と糖転移酵素

中山 淳  

(信州大学医学部分子病理学教室)

10:50 – 11:30 ステロイドホルモン:量と作用を可視化する

鈴木 貴  

(東北大学大学院医学系研究科病理検査学分野)

11:45 – 12:30 ランチョンセミナー
⑤細胞を知る―電子顕微鏡―
12:40 – 13:20 電子顕微鏡観察の基礎

寺田 信生  

(信州大学大学院総合医理工学研究科

医学専攻保健学分野 医療生命科学ユニット)

13:20 – 14:00 標的物質の局在を免疫電顕で見る:基礎と応用

秋元 義弘 

(杏林大学医学部解剖学教室(顕微解剖))

14:00 – 14:10 休憩
⑥細胞を知る―蛍光蛋白―
14:10 – 14:50 蛍光抗体法の基礎と実際

松崎 利行 

(群馬大学大学院医学系研究科生体構造学分野)

14:50 – 15:30 細胞内酸性環境の理解に向けた、耐酸性GFPの開発と応用へ

永井 健治  

(大阪大学 産業科学研究所) 

15:30 – 15:40 休憩
⑦機能を探る
15:40 – 16:20 イムノブロッティング法の基礎と応用

竹腰 進  

(東海大学医学部基礎医学系生体防御学領域)

16:20 – 17:00 免疫組織化学の診断、治療への臨床応用

近藤 哲夫  

(山梨大学医学部人体病理学分野)

 

①形態観察の基礎

生体内細胞・組織の基礎

上田 秀一 (獨協医科大学医学部解剖学(組織)講座)

生体を構成する細胞の基本的な構造と機能を理解した上で、これら細胞が協同して一定の機能を果たす上皮・結合・筋・神経の各組織の基本的な構成について学び、構成細胞の特徴を明らかにする。特に組織細胞化学を用いた解析での固定法や組織化学の原理の基本へとつなげる、細胞・組織の基本について講演する。

組織の取り扱いと固定方法の基礎 -形態学の大切な入口-

宮崎 龍彦  (岐阜大学医学部附属病院病理部・病理診断科)

形態学的解析、組織・細胞の観察には臓器の取扱いや固定を含む最初のプロセスが非常に大切である.ここに間違いがあると、その後の苦労は全て無に帰してしまう。特に固定は重要である。その理想は生体の中で営まれている活動の形態がそのままに不溶化,不動化されることであり,組織,細胞の構造を正確に観察するための生物活性を持った物質の迅速,厳密な不動化と,その機能を解析するために,それらの生物活性をできるだけ正常に近い状態に保存しなければならないという矛盾する2つの要件をバランスよく満たすことが重要である.
本講演ではまず形態的解析のための、組織の取扱い方の基礎的事項をレビューし、続いて化学固定と物理固定という固定の原理と固定剤の種類,固定の条件および標準的なプロトコールについて,組織と培養細胞の固定両方に関して詳細に述べ,その後,実験動物の固定に理想的と目される灌流固定の実際について実例とともに解説する.

組織化学の原理と観察の基礎

田中 秀央  (京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学)

組織形態の観察で最も基本となるヘマトキシリン・エオシン(HE)染色法に対して、着目する特定の構造や生体成分の組織内分布を調べるための特殊染色法として組織化学があり、両者を併用することで、1枚の組織切片試料から組織内の様々な情報を得ることができる。主な特殊染色として線維性結合組織、脂肪、生体内色素等を染め分ける様々な特殊染色の他、各種糖鎖を染め分けるレクチン染色、特異抗体を用いて着目する蛋白質等を検出する免疫組織化学的染色などが挙げられるが、個々の手法の背景や基本的な原理について体系的に学ぶ機会は少ない。本講義では、日常の研究あるいは診断の現場でしばしば実施されるこれらの組織化学的手法のうち主要なものについて、それぞれの目的、基本的な染色原理、および観察法について実例を交えて概説する。特に免疫組織化学について詳しく解説し、関連する講義の理解をより深めるための一助としたい。

②分子を観る-蛋白質-

免疫組織化学染色の実際と注意点

小澤 一史  (日本医科大学大学院医学研究科解剖学・神経生物学分野)

免疫組織化学法による特異的な抗体染色は、組織細胞化学の中でも最も基本的で汎用性が高い研究技法である。その基本的なステップは「固定」、「切片の作成」、「抗体染色とその可視化」、「顕微鏡観察」にまとめることが出来る。これらの各ステップは既に一定の標準的技法があるが、対象とする臓器や組織、用いる抗原、可視化の方法、最終的に観察に用いる顕微鏡等によっても「標準」に加えて、プラスアルファの智恵がよい結果を生み出すことがある。これらの「智恵」も含め、本講演では、これまで演者が経験してきた事象を出来るだけ噛み砕いて易しく解説することを目指す。

免疫染色の応用 ―多重染色法―

池田 勝秀  (国際医療福祉大学成田保健医療学部医学検査学科)

組織・細胞がもつ蛋白などの抗原性を検出できる免疫染色は、研究分野のみならず、その信頼性から診断分野にも広く用いられている。多くの場合、一つの抗原性を確認する単染色であるが、同時に複数の抗原性を確認できる多重染色も存在する。本講演では、酵素抗体法における多重染色を中心に、蛍光色素を用いた多重染色を含めて、染色原理・手順・注意点などをお話ししたい。多重染色は、技術を要する手法であるが、各染色工程・注意点を理解していただき、実践に至るように解説したい。

ボリューム電子顕微鏡イメージングにおける組織細胞化学

大野 伸彦  (自治医科大学医学部解剖学講座組織学部門)

電子顕微鏡観察において機能分子や構造を同定する上で、組織細胞化学的手法は重要な役割を果たしてきました。そして近年、急速に普及しつつあるボリューム電子顕微鏡イメージングによる3次元微細構造解析においても、そうした手法は研究を進める上で強力なツールになりつつあります。本講演では、研究への応用を実際に考える上での一助になることを目標に、ボリューム電子顕微鏡イメージングの特徴について概説するとともに、組織細胞化学的手法を応用することの利点や注意点、そして実際の手技についてわかりやすく解説します。

 

③分子を観る-DNA、RNA-

FISH法の原理と応用:コンパニオン診断からゲノム機能解析まで

稲澤 譲治  (東京医科歯科大学難治疾患研究所)

FISH法が開発され30年余りとなる。その開発は染色体微細構造異常や由来不明マーカー染色体の識別・同定を可能とすることで細胞遺伝学的検査と遺伝子レベルの解像度の融合を現するbreakthroughをもたらした。また、マルチカラー法やデジタル画像解析技術の発達により、FISH法はさらに進化を遂げた。間期核を用いた標的遺伝子の転座、欠失、重複、増幅の検出や、染色体テリトリーの可視化と3次元解析などの応用技術も開発され、分子標的薬のコンパニオン診断法として医療実装化だけでなく、クロマチン制御やダイナミクスなどゲノム機能の基礎研究にも新展開をもたらしている。

In situ hybridization (RNA)の基礎と応用

菱川 善隆  (宮崎大学医学部解剖学講座組織細胞化学分野)

In situ hybridization (ISH)法は細胞・組織切片上で特定の遺伝子発現状態とその局在を明らかにすることができる方法です。この方法は、細胞個々のレベルで目的とするmRNA発現を視覚化できるだけでなく、免疫組織化学で判別しにくい相動性の高いタンパク質のmRNA発現の違いを区別できる点や、分泌タンパク質が実際にどの細胞で産生されているかを明らかにできる点等で、他の遺伝子検出法に比べて有用な解析法です。しかしながら、実際の操作と結果の評価については、ある程度の「熟練」と「的確な対照実験」が必須です。この講習会では、実験器具の準備や試料の固定・薄切等の注意点を含めて、初心者にも扱いやすいオリゴDNAプローブを用いたISH法の基本的手技とその応用について、具体的に詳細に解説したいと考えています。

エピジェネティクスと組織化学

北澤 荘平  (愛媛大学大学院医学系研究科分子病理学講座)

特定の遺伝子が、特定の部位で、特定の期間、特定の強さで発現することにより、1個の受精卵から複雑な個体が形成される。DNAの塩基配列を変化させること無く、このような複雑かつ正確さが要求される遺伝子の発現調節を担っているのがエピジェネティクな機構である。エピジェネティクな調節機構は、主として、1)ヒストン蛋白質の修飾、2)DNAのメチル化、3)non-coding RNAの作用により、クロマチン構造の凝集(condensation)と離解(relax)という構造変化を可逆的に引き起こすことで、mRNAの転写をon/offさせている。この講習会では、エピジェネティクスの形態学的研究への展開についての総論的概説から、特定の遺伝子の特定の部位のDNAのメチル化シトシンによる修飾状態を、組織構造を保ったまま塩基配列特的にin situで観察する新しい組織化学的手技について解説する。

④分子を観る-脂質、膜、糖鎖-

細胞の膜脂質
向井 康治朗 (東北大学大学院生命科学研究科細胞小器官疾患学分野)

生体膜は、リン脂質二重層とほぼ同量のタンパク質によって形成されており、水溶性分子を透過させないバリアとしての機能を持ちます。加えて最近では、細胞内脂質の可視化技術の進展から、個々のオルガネラに特徴的な膜リン脂質が膜輸送やシグナル伝達に重要な役割を果たすことが明らかとなってきました。本講では、膜脂質の可視化技術の基本的な原理および手法と、脂質の可視化において特に考慮すべき点に関してお話ししたいと思います。

糖鎖と糖転移酵素

中山 淳  (信州大学医学部分子病理学教室)

糖鎖は蛋白質、核酸に次ぐ第三の生命鎖であり、発生・分化、がん、炎症、感染など様々な生命現象と密接に関連している。糖鎖はDNAに直接コードされておらず、糖転移酵素等の作用により生合成される。組織細胞化学的に糖鎖を検出する方法として、従来からレクチン染色や糖鎖特異抗体を用いた免疫染色が行われている。さらに、最近は糖鎖そのものでなく、糖転移酵素の検出も可能になってきた。本講習会では糖鎖の分類と生合成について概説した後、ホルマリン固定パラフィン包埋切片を対象に糖鎖や糖転移酵素を検出する方法について、演者らの具体例を提示しながら紹介する。

ステロイドホルモン:量と作用を可視化する

鈴木 貴  (東北大学大学院医学系研究科病理検査学分野)

ステロイドホルモンはコレステロールより生成される脂溶性ホルモンで、主に副腎や性腺より分泌される。多彩で強力な生理作用を有し、恒常性の維持のみならず癌を含めた様々な疾患に深く関与している。ステロイドホルモンの動態や病態生理を正しく理解するためには、生化学的な解析とともに組織学的解析が欠かせない。しかしステロイドホルモンはわずかな構造の違いで生理活性が異なり、また伝達物質として血中や組織中を移動するため、組織学的な検索には困難を伴う。そこで本講演では、ステロイドホルモンの量や作用を組織学的にアプローチする際の基本的な考え方や留意点、主な方法等を説明する。

⑤細胞を知る―電子顕微鏡―

電子顕微鏡観察の基礎

寺田 信生  (信州大学大学院総合医理工学研究科 医学専攻保健学分野 医療生命科学ユニット)

医学生物学研究において、動物臓器内における動的機能分子の構造とその局在を探索する必要があり、最近では遺伝子操作によるイメージング法も盛んになっています。これらの結果と相関性を持たせて、細胞―組織―臓器におけるできる限り生きた状態を反映させた本来の形や位置情報を保持した試料を意識しながら、電子顕微鏡レベルまでの標本作製について、凍結技法を含めた固定方法やその後の試料処理法と観察手段を紹介したいと思います。

標的物質の局在を免疫電顕で見る:基礎と応用

秋元 義弘  (杏林大学医学部解剖学教室(顕微解剖))

電子顕微鏡を用いて行う免疫組織細胞化学を免疫電子顕微鏡(免疫電顕)と呼びます。免疫電顕は、組織や細胞内での標的物質の局在を分子レベルで調べるための非常に有効な手法です。免疫電顕には、免疫反応を樹脂包埋する前に行うか後に行うかによって包埋前染色法と包埋後染色法があります。さらに樹脂包埋しないで凍結切片を作製し、免疫反応を行う凍結超薄切片法があります。本講義ではこれらの手法について基本的な手技と実際に行う際の注意点について解説し、その応用例について示します。

⑥細胞を知る―蛍光蛋白―

蛍光抗体法の基礎と実際

松崎 利行  (群馬大学大学院医学系研究科生体構造学分野)

本講演では動物組織の凍結切片やパラフィン切片、さらに培養細胞からの蛍光抗体法、とくに間接法について紹介します。とくに以下の点について解説する予定です。①蛍光観察の基礎的な知識、②蛍光標識二次抗体の選択、③蛍光抗体間接法の実際の手順と工夫点・注意点、④多重染色の実際の手順と工夫点・注意点、⑤バックグランド蛍光への対処、⑥標本の保管。初心者にはもちろん、経験者の皆様にも参考になるよう、演者の経験を踏まえて講演します。

細胞内酸性環境の理解に向けた、耐酸性GFPの開発と応用

永井 健治  (大阪大学 産業科学研究所)

これまで、バイオイメージング研究は数多くの重要な発見をもたらしてきました。一方で、従来のバイオイメージングはミクロまたはマクロな空間スケールに特化していたため、細胞レベルのイメージングと、より高次なマクロシステムのイメージングとの間に、しばしば相反する結果が生み出されることが知られていた。これは、ミクロとマクロなシステムの間に存在する、細胞数で3~6桁以上に及ぶ大きなスケール分断に起因していた。このミクロとマクロのスケール分断を解消し、より包括的な生命現象の理解に迫ることは、生物学はもとより、医学・薬学・農学など様々なライフサイエンス研究領域の発展に重要な課題である。本講習会では、同一標本において「木も観て森も観る」バイオイメージング法についてその必要性と現状、並びに展望について概説する。

⑦機能を探る

イムノブロッティング法の基礎と応用

竹腰 進  (東海大学医学部基礎医学系生体防御学領域)

イムノブロッティング法は、医学・生物学分野の研究に広く用いられている基本的な実験法の一つである。本法の大きな特徴は、抗体によって検出された蛋白質の分子量を確認することが出来る点であり、標的とする蛋白分子に対する特異抗体を入手することができれば、正確な発現解析が可能となる。また、免疫組織化学を行う際に要となる抗体の特異性についても容易に検定することができる。最近では、抗リン酸化蛋白抗体、抗アセチル化蛋白抗体など化学修飾された蛋白質に対する抗体が市販されるようになり、単なる発現解析ばかりでなく、細胞内情報伝達系や転写制御に関する情報を本法により得ることが出来るようになった。本講習会では、イムノブロッティング法の原理、基本的な手技、実際に本法を行う際に注意すべき点などを中心に解説する。

免疫組織化学の診断、治療への臨床応用

近藤 哲夫   (山梨大学医学部人体病理学分野)

免疫組織化学とin situ ハイブリダイゼーションは医療の現場、特に病理診断の分野において欠くことができない必須の技術となった。蛋白の発現、RNA、DNAの量・分布を解析することで病原体の検出、腫瘍の評価(細胞由来、良性と悪性、増殖能)が行われるだけでなく、腫瘍細胞がもつ遺伝子変異、染色体異常を組織標本上で同定することも可能となっている。さらには急速な展開を迎えている分子標的治療薬、免疫チェック阻害剤についても免疫組織化学の判定でその適応が決定されている。本講演では医療技術として用いられる免疫組織化学とin situ ハイブリダイゼーションの現状と今後の展開について解説する。

 

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