第43回 なら100年会館 大ホール
奈良県立医科大学

講習会プログラム

2018年8月2日(木) 講習会第1日目(なら100年会館 大ホール 1階)

9:00 開場
開会挨拶 9:30~ 小路武彦 理事長
西 真弓 実行委員長
講演1 9:40~10:25 「免疫組織化学法の原理」
小澤一史 (日本医科大学大学院医学研究科解剖学・神経生物学分野)
講演2 10:25~11:10 「組織の固定について -形をみて機能を識る大切な入口-」
宮崎龍彦 (岐阜大学医学部附属病院病理部)
11:10~11:20 休憩(10分)
講演3 11:20~12:05 「組織細胞化学のための標本作製の基本」
大野伸彦 (自治医科大学解剖学講座組織学部門)
12:05~12:15 休憩(10分)
12:15~13:15 ランチョンセミナー
13:15~13:25 休憩(10分)
講演4 13:25~14:10 「酵素抗体法実践入門」
鴨志田伸吾 (神戸大学大学院保健学研究科病態解析学領域)
講演5 14:10~14:55 「蛍光抗体法の基礎と応用」
松﨑利行 (群馬大学大学院医学系研究科生体構造学分野)
14:55~15:05 休憩(10分)
講演6 15:05~15:50 「光学顕微鏡の使い方」
田中秀央 (京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学)
講演7 15:50~16:35 「TEMを使った免疫電子顕微鏡法の実践」
小池正人 (順天堂大学医学部大学院医学研究科神経生物学・形態学講座)
16:35~16:45 休憩(10分)
講演8 16:45~17:30 「画像解析によるデータ数値化の基礎」
宮東昭彦 (杏林大学医学部解剖学)
講演9 17:30~18:15 「組織化学における抗体作成法」
渡辺雅彦 (北海道大学大学院医学研究院解剖学分野解剖発生学教室)
18:40~ 懇親会(なら100年会館1階LaiLai Cafe)

2018年8月3日(金) 講習会第2日目 (なら100年会館 大ホール 1階)

8:50 開場
講演10 9:10~ 9:55 in situ hybridizationの原理と基礎」
菱川善隆 (宮崎大学医学部解剖学講座組織細胞化学分野)
講演11 9:55~10:40 in situ hybridizationの実践」
柴田恭明 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科組織細胞生物学分野)
10:40~10:50 休憩(10分)
講演12 10:50~11:35 「Western blotting法の基礎と応用」
田中進 (関西医科大学医学部第一解剖学講座)
講演13 11:35~12:20 「病理組織細胞検体を用いたMicroRNAの検出法—細胞またはFFPE組織検体の核酸抽出からリアルタイムRT-PCR法まで—」
藤井智美 (奈良県立医科大学医学部病理診断学講座)
12:20~12:30 休憩(10分)
12:30~13:30 ランチョンセミナー
13:30~13:40 休憩(10分)
講演14 13:40~14:25 「蛍光・化学発光ライブイメージングの現状と展望」
永井健治 (大阪大学産業科学研究所生体分子機能科学研究分野)
講演15 14:25~15:10 「透明化技術が切り拓くバイオイメージングの新たな展開」
日置寛之(順天堂大学医学部大学院医学研究科神経生物学・形態学講座)
15:10~15:20 休憩(10分)
講演16 15:20~16:05 「レーザーマイクロダイセクション法」
中西陽子 (日本大学医学部病態病理学系腫瘍病理学分野)
講演17 16:05~16:50 「CRISPR/Cas9を用いた培養細胞と動物個体でのゲノム編集」
堀江恭二 (奈良県立医科大学医学部第2生理学講座)
閉会挨拶 16:50~17:00 増田しのぶ 次期実行委員長
(日本大学医学部病態病理学系腫瘍病理学分野)
17:00 終了

講演1

免疫組織化学法の原理
小澤一史 (日本医科大学大学院医学研究科解剖学・神経生物学分野)

免疫組織化学法は組織化学研究技法の中において最も汎用され、様々な研究分野で利用される方法で、切片上の組織内における目的物質の特異的な同定を目指す方法である。形と物質の観察、すなわち形態学と生理学・生化学の合体的な研究手法といえる。免疫の原理を用いて「抗原」と「抗体」という、「鍵と穴」の関係を明らかにし、可視化する方法である。本講では、そもそもの免疫組織化学の原理、免疫組織化学法のステップと注意点、用いる抗体の種類とその特異性の検定、多重免疫染色法や免疫組織化学とin situ hybridizationの組み合わせといった応用的技法への展開について初心者にも理解できるように平易な解説を試みる。

講演2

組織の固定について -形をみて機能を識る大切な入口-
宮崎龍彦(岐阜大学医学部附属病院病理部)

組織・細胞の観察に固定は必須である。固定の理想は生体の中で営まれている活動の形態がそのままに不溶化,不動化されることであり,組織,細胞の構造を正確に観察するための生物活性を持った物質の迅速,厳密な不動化と,その機能を識るための,それらの生物活性をできるだけ正常に近い状態に保存しなければならないという矛盾する2つの要件をバランスよく満たすことが重要である.
本講ではまず化学固定と物理固定という固定の原理と固定剤の種類,固定の条件および標準的なプロトコールについて,主に組織と培養細胞の固定に注目して詳細に述べ,その後,実験動物の固定に理想的と目される灌流固定の実際について実例とともに解説する.

講演3

組織細胞化学のための標本作製の基本
大野伸彦 (自治医科大学解剖学講座組織学部門)

生物組織を用いて免疫染色や組織化学染色を行って顕微鏡で観察する際、多くの場合はそのままで染色して観察することは難しく、染色の前に固定された生物組織に対して様々な処理を行う。こうした場合に用いられる標本作製方法には凍結切片やパラフィン切片の作製法などが存在し、それぞれの方法が利点や欠点などの特徴を持つ。本講ではいくつかの代表的な標本の作製法の特徴を示し、その具体的な方法についても解説する。そして初学者がその目的に応じて自ら適切な方法を選択し、実際に実験を行うことができるようになることを目標として、各手法においてつまずきやすい注意点についても、演者の経験もふまえながら解説したい。

講演4

酵素抗体法実践入門
鴨志田伸吾(神戸大学大学院保健学研究科病態解析学領域)

酵素抗体法における高感度法と抗原賦活化法の開発・普及が相まって、ホルマリン固定パラフィン切片でもほとんどの抗原を検出できる時代となった。しかし、正確かつ再現性の高い技術が十分に普及したとは言えない。本講では、酵素抗体法をこれから始めよう、酵素抗体法について改めて見直してみたいと考えている方々のために、基礎的・実践的な解説を行う。内容としては、酵素抗体ポリマー法の原理、抗原賦活化法とその選択、トラブルの原因と対策(固定・脱灰・切片作製・内因性酵素ブロッキング・抗原賦活化といった各工程におけるピットフォール、内因性ビオチン・背景染色への対処法)および酵素抗体二重染色法を予定している。

講演5

蛍光抗体法の基礎と応用
松﨑利行(群馬大学大学院医学系研究科生体構造学分野)

本講では動物組織の凍結切片やパラフィン切片からの蛍光抗体法、とくに間接法について紹介します。とくに以下の点についてお話する予定です。①蛍光観察と蛍光顕微鏡の基礎的な知識、②蛍光抗体間接法で重要な蛍光標識二次抗体の選択、③蛍光抗体間接法の実際の手順と工夫点・注意点、④多重染色の実際の手順と注意点、⑤バックグランド蛍光への対処、⑥標本の保管。初心者にはもちろん中級者の方々にも参考になるよう演者の経験を踏まえてお話しします。

講演6

光学顕微鏡の使い方
田中秀央(京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学)

光学顕微鏡は生命科学において不可欠な観察ツールである。その基本型である明視野顕微鏡は、見たいものが簡単に見られるため、その原理を殆ど意識することなく使われている。また、近年の蛍光イメージング技術の進歩とともに光学顕微鏡は高機能化・複雑化し、観察者には手を加えられない「ブラックボックス化した」ものが普及してきた。しかし、何れの顕微鏡も機械任せに使っていては、その機能が十分に発揮されず誤った結果や解釈にもつながりかねない。光学顕微鏡を使いこなすには、その基本的な仕組みや使い方を理解しておくことが大切である。本講習では光学顕微鏡に関する基礎的事項を解説し、明視野顕微鏡、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡について、各々の原理と使い方のポイントを解説する。

講演7

TEMを使った免疫電子顕微鏡法の実践
小池正人(順天堂大学医学部大学院医学研究科神経生物学・形態学講座)

本講では以下のポイントに基づき、免疫電子顕微鏡法のpractical(=効率良い論文発表に繋がる)なフローを紹介したい。
①各種実例を紹介することで、免疫電子顕微鏡法の今日における有用性について理解する。
②化学固定を施した各種組織・細胞を用いた代表的な免疫電子顕微鏡法の試料作製法と免疫染色法について紹介し、目的に応じて使い分ける必要性を理解する。
③免疫電子顕微鏡の成否が、電顕解析技術そのものではなく、それに先んじて行う光顕レベルの予備解析による適切な一次抗体の選定と、観察すべき対象の予測に大きく依存すること理解する。

講演8

画像解析によるデータ数値化の基礎
宮東昭彦(杏林大学医学部解剖学)

美しい顕微鏡写真は実験データの提示法として説得力がありますが、画像解析の手法を用いると、陽性細胞数や面積比率、染色強度、共局在の有無など、画像のもつ様々な特徴の情報を数値化して定量的に評価したり、多数の画像を対象として統計学的に検討したりすることが可能となります。ここでは、無料で利用できる画像解析ソフト ImageJ を利用して、画像解析の考え方、画像解析でできること、よく使われるテクニックの具体例などについて、基礎的な画像解析の概略を解説します。また、実際の解析処理でよく遭遇するトラブルや回避法、画像解析を利用する上で注意点と限界についても説明します。

講演9

組織化学における抗体作成法
渡辺雅彦(北海道大学大学院医学研究院解剖学分野解剖発生学教室)

特異抗体を入手することは組織化学の基本であるが、手間と時間と費用のかかる作業である。ましてや、それを作成することは更に困難な作業である。大学院時代にポリクローナル抗体作成を始めてから30年、抗体の作成成功率はせいぜい5%というのが、これまでの通算成績である。これらの中には、成功率が低い受容体やチャネルのような膜蛋白から、成功率の高い可溶性蛋白まで含んだ平均値である。その間、抗原の長さ、抗原部位の選択、抗体の精製を含め、思いつくだけの工夫を試行し、抗体作成の戦略も多少蓄積した。講習会では、特に、融合蛋白と合成ペプチドを組合せたポリクローナル抗体の効率的な作成法について紹介する。

講演10

in situ hybridizationの原理と基礎
菱川善隆 (宮崎大学医学部解剖学講座組織細胞化学分野)

in situ hybridization(ISH)法は組織切片上で特定の遺伝子発現状態とその局在を明らかにする方法です。この方法は、細胞個々のレベルで、目的とするmRNA発現を視覚化できるだけでなく、分泌蛋白質を産生する細胞の同定や、相同性の高い蛋白質をmRNAレベルで区別できる点等、で有用な分子組織細胞化学的解析法です。しかしながら、実際の手技と結果の評価についてはある程度の「熟練」と「的確な対照実験」が必要です。この講習会では、実験器具の準備から、固定法、薄切時の注意点を含めて、特にオリゴDNAプローブを用いたISH法の基本的な手技を中心に、初心者の皆様が実際に研究に利用していただけるよう具体的に詳細に解説したいと考えています。

講演11

in situ hybridizationの実践
柴田恭明(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科組織細胞生物学分野)

標的核酸と雑種形成するプローブ(標的プローブ)を用いたIn situ ハイブリダイゼーション(ISH)を成功させるには、あらかじめ陽性対照プローブを用いて1)実施環境ならびに2)利用する標本を評価し、かつ3)用いる標本に最適なプロティネースK(PK)濃度を決定しておくことが必要です。
本セッションでは、mRNA を標的とし、非放射性標識合成オリゴプローブを利用したISH を主体に、陽性対照として28Sプローブを用いた1)、2)、3)の評価方法を – 特に2)につきましては、脱灰操作、固定時間や包埋方法など組織調整方法の差異によるシグナルの変化を- 詳細に解説致します。さらに当教室が用いる標的プローブの設計方法、プローブ標識の種類、標識の評価方法であるフィルターハイブリダイゼーションについてわかりやすく御説明致します。本セッションが、初めてISH を行う先生方のお役に立てれば幸甚に存じます。

講演12

Western blotting法の基礎と応用
田中進(関西医科大学医学部第一解剖学講座)

Western blotting法は、電気泳動による分離と抗原抗体反応を組み合わせることにより、タンパク質の夾雑物から特定(目的)のタンパク質を検出する方法です。本法により、目的タンパク質の発現組織、細胞内局在、発現量、相互作用タンパク質、翻訳後修飾等の情報を得ることができます。また、免疫組織化学で使用する抗体の特異性の検定にも使用されます。本講では、Western blotting法の原理、基本的な手技、いくつかの注意点を概説しながら、Western blotting法を応用して得られた様々な実験のデータも合わせて解説していきます。

講演13

病理組織細胞検体を用いたMicroRNAの検出法
-細胞またはFFPE組織検体の核酸抽出からリアルタイムRT-PCR法まで-
藤井智美(奈良県立医科大学医学部病理診断学講座)

近年、病理組織診断においては疾患特異的な遺伝子や蛋白質に対する分子標的療法を視野に入れたコンパニオン診断が悪性腫瘍を中心として導入されつつある。コンパニオン診断の対象候補として注目されているのがmicroRNA(miRNA)をはじめとするsmall RNAの検出である。
miRNA は19-25塩基からなる低分子量RNAで、標的mRNAの3’非翻訳領域に結合し、mRNAの転写、翻訳の阻害や分解を行うことで、癌細胞の増殖抑制或いは促進する。
本講では、種々の癌細胞を用いた分子細胞生物学的研究で明らかとなったmiRNAおよび標的分子について病理検体の細胞およびパラフィン包埋組織から検出する方法を紹介する。

講演14

蛍光・化学発光ライブイメージングの現状と展望
永井健治(大阪大学産業科学研究所生体分子機能科学研究分野)

蛍光イメージング技術は生命科学研究に革命を起こしたことは論を待たない。しかしながら、励起光照射に伴う光毒性や自家蛍光といった問題がつきまとっていた。一方、生物発光イメージングは励起光照射を必要としないため、これらの問題を回避する事ができる優位性が以前から認識されていたものの、長時間露光が要するため普及が進んでいない。本講習会ではライブイメージングを可能にする高輝度発光タンパク質Nano-lantern、およびそれをベースとする Ca2+, cAMP, ATPなどの各種指示薬、さらに発光イメージングとオプトジェネティクスの併用などについて紹介し、合わせて蛍光、発光イメージングの展望について述べる。
参考文献
• Inagaki S, et al. Genetically encoded bioluminescent voltage indicator for multi-purpose use in wide range of bioimaging. Scientific Reports, 7, 42398, 2017.
• Suzuki K, et al. Five colour variants of bright luminescent protein for real-time multicolour bioimaging. Nature Communications, 7, 13718, 2016
• Takai A, et al. Expanded palette of Nano-lanterns for real-time multicolor luminescence imaging. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 112, 4352-4356, 2015.
• Saito K, et al. Luminescent protein for high-speed single-cell and whole-body imaging. Nature Communications, 3, 1262, 2012

講演15

透明化技術が切り拓くバイオイメージングの新たな展開
日置寛之(順天堂大学医学部大学院医学研究科神経生物学・形態学講座)

国内外で続々と開発されている透明化技術は、高速かつ大規模な三次元構造解析を可能にする革新的技術であり、組織の構造解析に新たなブレイクスルーをもたらすと期待されている。
透明化技術を比較する上で重要なポイントが「clearing–preservation spectrum」である。透明化能力(clearing capability)の向上は散乱光の抑制抑制につながり、深部まで安定して高精細な画像を取得するために大事である。一方で、透明化処理の影響によって組織の構築や標識シグナルの保持が悪くなるというトレードオフが厳存する。標識された構造物を再現よく定量的に観察するためには、構造や各種シグナルを適切に保存・維持する能力(preservation capability)が重要である。本講では、筆者らが開発した透明化技術ScaleS法を中心に、このトレードオフ問題について議論したい。

講演16

レーザーマイクロダイセクション法
中西陽子(日本大学医学部病態病理学系腫瘍病理学分野)

レーザーマイクロダイセクション法は、新鮮凍結組織やホルマリン固定パラフィン包埋組織などを薄切して染色した標本を顕微鏡で観察し、研究対象としたい細胞や組織を同定して、レーザーで高精細に回収する方法である。本法の開発により、組織や細胞の形態学的所見と各種分子の発現を関連付けて解析することが可能となった。培養細胞や細胞診検体にも適用可能である。近年の大規模遺伝子解析技術の進歩の活用には、得られた結果がどの細胞や組織のものであるかを厳密にすることが求められる。本報ではレーザーマイクロダイセクション法とそれに関連する基本的手技やピットフォールについて解説する。

講演17

CRISPR/Cas9を用いた培養細胞と動物個体でのゲノム編集
堀江恭二(奈良県立医科大学医学部第2生理学講座)

CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術は、単なる遺伝子破壊やノックインにとどまらず、メガベースサイズの広汎なゲノム領域の欠失、guide RNA ライブラリを用いた全遺伝子の網羅的破壊、ゲノム上の特定部位の可視化、DNAのメチル化やヒストン修飾の改変といった、様々な応用を可能にした。その一方で、日進月歩の技術であるが故に、未経験者にとっては現状の把握が困難で、自分の実験系へ取り入れるのが必ずしも容易ではないことも多い。本講習では、マウス個体と培養細胞での演者の経験をもとに、これからゲノム編集を始める研究者にとって有用な、実際的な話題を提供したい。

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